こんにちは。ユーザーファースト推進室ディレクターの大黒です。
ありがたいことにクックパッドは今年で20年目をむかえ、数多くのユーザーに利用されるまでに成長しました。それ故に発生する課題もあり、今回はその中でもユーザー登録に使われているメールアドレスの課題と対策をご紹介したいと思います。
ユーザー登録の仕組み
クックパッドのユーザー登録では、下記の項目が必要となります。
- メールアドレス
- パスワード
- 郵便番号
- 生年月日
※iOSアプリでは郵便番号と生年月日は任意入力となります
SNSアカウント認証や認証コードでのアクティベートを採用するサービスが今では主流ですが、20年続くサービスであれば一般的なユーザー登録フローではないでしょうか。しかしながら最近のスマートフォンユーザーの多くはメールを使わないという実態も分かっているため、ユーザー登録にメールアドレスを使い続けるかどうかは、別途議論を進めているところです。
メールアドレスの課題
一度取得したメールアドレスを生涯にわたって使い続けるという人は多くありません。SNSやメッセージアプリが普及した今では、メールでやり取りをすることが少なくなり、ナンバーポータビリティが可能になったことも相まって、キャリアのメールアドレスが変わることへの抵抗感はほぼありません。また、登録した時のメールアドレスとパスワードさえ覚えていれば、実際にそのメールアドレスを使っていなくてもログインできるので、メールアドレスを変更せずに使い続けるという人も出てきます。
例えば私たちが把握しているメールアドレスの課題としては、次のようなものを挙げることができます。
3〜6ヶ月でメールアドレスは再利用される
キャリアやプロバイダーにもよりますが、使われなくなったメールアドレスは3〜6ヶ月程度の保留期間を経て、再利用が可能になります。メールが普及してからの年月を考えると、多くのメールアドレスが再利用されていると予想されます。
登録できない人がでてくる
クックパッドでは、1つのメールアドレスで作れるアカウントの数は1つだけです。もしユーザーAさんが取得したメールアドレスが、過去にクックパッドのユーザー登録に使われていて、誰かがメールアドレスを変更せずに使い続けているとしたら、その人がメールアドレスを変更するか、ユーザーAさんが別のメールアドレスを取得しないとユーザー登録ができないことになります。
以上のことをふまえると、フィーチャーフォン全盛期からサービスを続けているクックパッドとしては、ユーザー登録、もしくはメールアドレス変更から一定期間経過しているユーザーに対して、登録しているメールアドレスを現在も使っているかどうかを確認することが大切だと考えました。
最小の実装で確認施策を行う
ユーザーにメールアドレスが最新であるかどうかを確認するような施策は、他社ではあまり事例がなく、社内でも知見が全くない状態から始まりました。このような場合はなるべく既存の仕組みを使い、対象者をできるだけ絞り込んでコンパクトなサイズでまず試してみることが大切です。
重要なお知らせという仕組み
クックパッドには返金などが必要になったユーザーに対して、案内を通知する仕組みを持っています。これはアプリで使われている仕組みですが、PUSH通知とアプリのトップスクリーンに導線が表示されるため、ユーザーに内容を確認してもらえる確率が非常に高くなります。今回はこの仕組みの一部を使い、何度かテストしてみることにしました。
対象者を定義する
メールアドレスの課題を考慮すると、キャリアのメールアドレスで登録、またはキャリアのメールアドレスに変更してから一定期間経過しているユーザーの場合、機種変更などによりメールアドレスが変わっている可能性が高いという仮説がたてられます。あとは一定期間をどうするかですが、メールアドレスの保留期間が3〜6ヶ月程度なのを考慮すると、6ヶ月以上経過している人たちを対象とした方がよさそうということになりました。
施策の実施
施策の評価は下記の数値を元に行いました。
変更率
メールアドレスをいまは使っていないと判断し、新しいメールアドレスの登録が完了したユーザーの割合変更手続き中
メールアドレスをいまは使っていないと判断し、新しいメールアドレスの登録が完了していないユーザーの割合アクション率
上記の変更率と変更手続き中に加え、「使っているメールアドレスです」と明示的に回答してくれたユーザーの割合
第1回テスト
PUSH通知を大量に配信すると、サイトに思わぬ負荷がかかる場合があるので、インフラ面でも問題がないことを確認する必要があります。なので最初のテストでは、無事にPUSH通知が配信できるか、ユーザーがPUSH通知を開いてくれるかという点を中心に検証しました。
配信数 | 変更率 | 変更手続き中 | アクション率 |
---|---|---|---|
300 | 1% | 1% | 35% |
結果を見てみると、多くのユーザーがPUSH通知に反応してくれたことが分かります。インフラ面でも問題がないことが分かったため、今度はメールアドレスを変更したい人たちが無事に変更することができるかを検証することにしました。
第2回テスト
このテストではある程度配信数を増やし、メールアドレスを変更するユーザーが多くなるよう抽出条件を変更し、メールアドレスの更新が古いユーザーを対象としました。
配信数 | 変更率 | 変更手続き中 | アクション率 |
---|---|---|---|
1,000 | 5.1% | 1.8% | 40.3% |
結果としては変更手続き中で止まっているユーザーが、前回と同じくらいの割合でいることが分かります。このことからメールアドレス変更フローを見直してみたところ、ユーザーが躓くポイントがあることが判明したため、既存のメールアドレス変更フローを改善することにしました。
メールアドレスを変更するには、パスワードの入力が必要になります。登録しているメールアドレスを現在使っておらず、パスワードを忘れてしまうと、パスワードの再設定を行うことができないため、メールアドレスの変更ができずフローの途中で止まってしまいます。
改善前
別件でメールアドレス変更フローの改善を行った際に、パスワードを忘れてしまった場合の考慮が漏れていました。この場合、サポートにお問い合わせをして本人確認を行うことで、パスワードの再設定をすることができるので、パスワード入力画面にお問い合わせへのリンクを設置することにしました。
改善後
この改善を行った結果、この導線から1日平均約3件のお問い合わせがありました。言い換えると、メールアドレスを変更しようと思ったがパスワードが分からず、どうしていいか困っていた人が1日平均約3人ほどいたということになります。
第2回のテスト結果としてはアクション率は前回と同じくらい高く、PUSH通知に対してのネガティブなご意見もなかったため、メールアドレス変更フローの改善を行い、施策としてはこのまま進めるという判断になりました。
まとめ
実際に登録しているメールアドレスを現在も使っているかどうか確認してみると、「使ってるメールアドレスです」というアクションをしてくれたユーザーもたくさんいて、ユーザーにとっては非常に関心が高いことだと分かりました。提供するサービスにもよりますが、サービス側から定期的に「登録してるメールアドレス使ってる?」と聞いてあげることは、とても大事なことです。しかしながら冒頭にも書いた通り、いつまでユーザー登録にメールアドレスを必須にするかについては引き続き議論を重ね、今後の改善に繋げていきたいと思っています。