こんにちは。研究開発部エンジニアの山田(@y_am_a_da)です。ついに日本でも Amazon Echo の発売が始まりましたね。
今回は Amazon Echo 向けにリリースをしたクックパッドのスキル( Amazon Echoではアプリと呼ばずにスキルと呼びます)についての紹介と、開発をしてみてわかった音声操作の強みと弱みについて紹介をしていきたいと思います。
Amazon Echoとは
Amazon Echo は、Amazon 社の販売するスマートスピーカーです。声で命令をすることで、端末に内蔵されている Alexa と呼ばれる音声アシスタントが処理を行ってくれます。 特徴として、基本的に操作は全て音声で行い、レスポンスも音声で返ってくる点が挙げられます(海外では液晶が搭載されており、そこへレスポンスを返すモデルも存在します)。
すなわち、スキルの開発者は、 PC やスマートフォン上と違い、基本的には全てを音声のみで完結させる必要があるという前提で開発を進めていく必要があります。 この制約のもと開発を進めて得られた音声でのユーザーインターフェース、いわゆる Voice User Interface についての強みと弱みについて紹介をします。
Voice User Interface の強み
- 情報の入出力が早い
端末を手に届く範囲に持ってくる必要がないため、使いたいと思った瞬間に命令を行い、その結果を受け取ることが出来ます。
- 操作が直感的
音声アシスタントのインタラクションは基本的に人間を模倣しているため、人間とのコミュニケーションを取るように操作が出来ます。
- ハンズフリー
入出力は音声なので、キッチンや車内、フィットネス中には嬉しい利点です。
Voice User Interface の弱み
- 一覧性に乏しい
視覚での情報と比較して処理できる情報量は少ないため、一度に多くの情報を返す用途には向いていません。何かの検索結果を30件読み上げられる状況を想像してみるとその難しさがわかると思います。
- 情報のフィルタリングが難しい
視覚的な情報であれば、慣れてくると流し読みのように必要な情報だけを受け取ることができるのですが、音声では読み上げ側に工夫をしないとこれが出来ません。
- 全体のインタラクションはそこまで早くない
入出力こそ早いものの、出力された情報をフィルタリングすることが難しいことから、工夫をしないと全体のインタラクションは早くなりません。
また、強みか弱みかはケースバイケースなのですが
- インタラクションは基本的に全てオープンである
という点も大きな違いです。
クックパッド 〜使いたい材料だけで、すぐに作れる人気の料理レシピ提案〜
上記の点を踏まえた上で、さらに
- Amazon Echoは基本的に屋内、特に個人での購入であれば家に置かれることが多いだろう
- 聞かれるタイミングは料理をする直前、もしくは最中である
という仮説を立てて、わざわざ買い物に行かなくてもすぐに料理を始められるよう、冷蔵庫にある食材1つだけで美味しい料理のインスピレーションを与えるスキルを開発しました。
スキルの具体例は、明日弊社デザイナーの倉光が投稿する記事にございますのでこちらでは省略致します。
現在プレミアムサービスユーザーでない方は、スキルの起動時にプレミアムサービスが最大2ヶ月無料になるクーポンをプレゼントしておりますのでこの機会にぜひお試しください。
工夫をした点
スキルを開発する上で意識をしたことを紹介します。
モバイルアプリの代替は目指さない
Voice User Interface の特性上、一貫した情報が取得しにくく、フィルタリングも難しいため一度に提供できる情報はかなり少ないです。また、スマートスピーカーはスマートフォンとハードウェアの特性が異なり、おそらく購入の用途も異なることが多いと思います。
そのため、スマートフォン用に提供されているモバイルアプリをそのまま移植しようとせず、音声操作の利便性をできる限り活かせるよう意識して開発を進めました。
インタラクションをできる限り減らす
せっかく情報の入出力が早いという利点を持つ Voice User Interface を使っても、インタラクションを増やしてしまうと全体としてはスマートフォンを使ったほうが早いし便利ということになりかねません。
そうならないように、クックパッドのスキルでは無駄なインタラクションを省きシンプルにすることを目指しました。これは、例えば読み上げる文章を短くするというだけのことではなく、そもそもスマートスピーカーには向いていないような機能は実装せず、できることを思い切って減らすということもしています。
例えば、何でも検索できるフリー検索機能でユーザーの望む検索結果を提供するためには、スキルは提案の量を増やすか聞かれた内容の意図を絞り込むためにユーザーに質問をする必要があります。これではユーザーに長い文章を我慢して聞いてもらうか、多くの質問に答えてもらうことが必要となってしまい離脱の原因となるおそれがあります。
聞かれた内容によって提案のフローを変える
無駄なインタラクションを減らしつつもできる限り多くのニーズに応えられるよう、聞かれた内容によってレシピを提案するロジック、インタラクションを変更しています。大まかには
- 食材1つの場合 もともとのコンセプトである「使いたい材料だけで、すぐに作れる人気の料理レシピ提案」に準じて聞かれた材料だけで簡単に作ることのできるレシピを提案します。
- 食材2 or 3つの場合 インスピレーションを得ることを目的としていると想定し、食材が1つの場合よりも幅広くレシピを提案します。
- 料理名を聞かれた場合 その料理の作り方を思い出したい(もしくは知りたい)と想定し、その料理で一番人気のレシピを提案します。
これら3パターンにおいて、それぞれユーザーが聞く状況の仮説を立て、適切な提案ができるようロジックを組み立てています。 あくまでも仮説をベースとしているので、利用のされ方を見ながら検証と改善を進めていく必要があると思います。
このような工夫をすることで、モバイルアプリのような万能さはなくても、特定のシーンではより役に立てるよう意識しています。 PCとスマートフォンの関係のように、シーンごとに使い分けられる存在になることを目指しています。
日常的に使えるものを目指す
Amazon Echo には液晶が存在しないため、ユーザーはスキルのインストール時以外にそのアイコンを目にする機会がありません。
すなわち、一度ユーザーにスキルの存在を忘れられてしまうと再び見つけてもらうことが困難であるため、リテンション率が低くなってしまいます。 そのためにも、日常的に使ってもらうことでその存在を覚えていてもらえることを目指しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。スマートスピーカー向けに提供するサービスは、その制約の厳しさにより、ユーザーやその周辺情報へのより深い理解が必要となります。
今回は仮説と検証にもとづき開発を進めていきましたが、機械学習やIoTを活用することでよりユーザーフレンドリーなサービスを開発できる可能性があると考えています。弊社ではこのような課題を解決できる機械学習、IoTの知識を持つエンジニアを募集しています。 クックパッド株式会社 研究開発部 採用情報
明日は弊社デザイナーの倉光よりスキルの開発にあたって実際に行ったプロトタイピングなどについて紹介致します。