クックパッド料理教室の伊尾木です。
このエントリーでは、クックパッド料理教室での「ユーザ(先生)を理解」するための工夫をご紹介します。
クックパッド料理教室(https://cookstep.cookpad.com)とは、クックパッドが認定した料理教室への予約サービスになります。 クックパッドの厳正な審査を通過した料理教室だけが加盟でき、様々なジャンルの先生に参加頂いています。
例えば、ミシュランの星付きレストランでシェフをしていたフレンチの先生や、 タイ国大使館から認定されているタイ料理の先生などバラエティにとんだ先生方がそれぞれ得意な分野のレッスンを開催しています! よく誤解されるのですが、クックパッドのレシピを使ってレッスンを行うわけではありません。レシピは全て先生が独自に開発したものになります。
ユーザ(先生)を理解しよう
クックパッド料理教室では、ユーザは2人います。1人目は、予約してレッスンを受けてくれる生徒さまです。そして2人目はレッスンを開催してくれる先生です。
先生に対しては予約管理や、レッスン管理を行うための管理画面を提供しており、私(伊尾木)がメインで開発を行っています。 先生に便利な管理画面を開発していくために、先生や先生の業務を理解するために様々な施策を行っています。
先生の業務を理解しよう
「ドッグフードを食べる」つまりは、自分たちで作っているサービスを自分たちでヘビーに利用する、ということが重要だというのはよく知られています。 実際、クックパッド料理教室の開発チームでも、頻繁に自分たちで予約してレッスンに参加しています。
ところが、管理画面のユーザは料理教室の先生です。 私は料理教室の先生になれないので、管理画面をリアルに使うことができません。 生のドッグフードを食べることができないのです。
1. プログラミング言語の先生になってみた
料理教室の先生にはなれませんが、それでも先生業務を体験することは重要です。 そこで、料理教室の先生ではなく、プログラミング言語を教える先生になってみることにしました。
プライベートレッスンを開催するためのサービスが世の中にいくつかりますが、クックパッド料理教室とやや似ているサービスを選び、実際に先生として登録しました。 会社の許可を得て、毎週1、2回はレッスンを開催しています。
プログラミング言語のレッスンではありますが、レッスンを準備して運営する、レッスン前後に生徒さまとやりとりを行うというのは料理教室も同じです。 この中で実際にレッスンを開催するさいに、何を考え、どう感じるかをリアルに体験することができ、サービスを設計するうえでとても役にたっています。
特に他サービスの仕組みを具体的に利用することで、そのサービスの良い機能から発想を得て、クックパッド料理教室に組み込んだ機能がいくつもあります。
2. 頻繁にレッスンに参加する
先にも書きましたが、私たちのチームではスタッフ全員が頻繁に様々なレッスンに参加しています。 エンジニアも、月に数回はレッスンに参加します。 ただ、そこで得られる知見の多くは生徒さま側に関するものです。
ですが、色々な先生のレッスンに参加していると、各先生の様々な努力を知ることができます。 そんな努力の中から、良いと思うものは他の先生も活用できるように機能として実装したりしていします。
例えば、リピータの多い先生方はレッスン受講中に「次回はこんなレッスンを考えてますよー」といった会話をして、次回の予約に繋げているということが分かりました。 そこで、もっと自然に次回レッスンの案内ができるよう、レッスン案内チラシを自動で生成する機能を実装しました。 これは今では非常に重要な機能になっていますが、実際にレッスンに参加しないとこの施策の存在に気づきかなかったかもしれません。
3. 全国の先生に電話相談を行った
クックパッド料理教室は全国展開に展開していて、北は北海道から南は沖縄まで教室が存在します。 一方、私たちのチームは東京で仕事しています。なので、どうしても地方教室へのフォローが手薄になってしまいます。
各教室との連絡のやりとりはメールなどが主ですが、やはり直接会話をしよう!というわけで、全教室(当時100教室ていど)に電話相談を実施しました。 これは営業チームだけではなく、エンジニアも含めてチーム全員で100教室に架電しました。
この結果、地方を含めた全教室でどのような課題があり、あるいはどのような機能が喜ばれているのかを肌で知る事ができたのは大きな収穫でした。 特に、地方の先生の多くが管理画面上の便利機能の存在に気づいていないということが判明し、 もっと分かりやすい導線を考え管理画面のTOPを変更したり、あるいは積極的に便利機能の紹介を行うなどフォローを行いました。 また、レッスンページの書き方や写真などのを相談を先生と直接行った結果、レッスンページの質が向上し、予約のスピードがあがったように感じます。
4. 先生の活動結果を知る
先生の活動の結果を見るために、予約や口コミが入ると自動的にチームのチャットルームに通知される仕組みを導入しました。
教室数が増えてくると個々の教室の状況がみえづらくなってきます。全体の予約数や公開レッスンの数などは常にチェックしていますが、 個々の先生の活動結果をリアルタイムで実感することは難しいのです。 そこで、予約や口コミが入るたびに、チームのチャットルームに自動的に通知するようにしました。
この結果、どの教室がいつ予約が入ったのかがリアルタイムで分かるようになりました。 レッスン公開後1時間で100席近くが完売する教室などをすぐに見つけることが可能になりました。 実際、チームの会話の中でも「あ、XX教室に予約入った!写真を変えたからかな」とか「YY教室に初予約入った!」や「ZZ教室、一気に予約埋まっていきますね!!」 というような発言が増え、先生の活動により関心がむくようになりました。
ちなみに、これには副次的な効果もあります。予約や口コミは私たちにとっても嬉しいものです。 チャットにその通知が流れてくると、常にポジティブフィードバックを受けることになるので、モチベーション向上にとてもとても効果があります。
先生の意見を聞こう
先生の意見を聞くことも非常に重要視しています。やはり実際に使う人の意見は、こちらの想定できていなかったものであったりするため、貴重ですね。 しかし、そうはいっても中々、先生方からポンポンと意見や要望がでてくるものでもありません。 多くの方は、多少不便だと思っても「言ってもしょうがない」と考えて、意見を言ってくれません。これはお互いにとって不幸だと思うのです。
そこで「先生と共に成長する管理画面」というコンセプトを打ち立て、先生方が気軽に意見や要望を言えるような雰囲気を作ることにしました。 「先生の意見を反映していますよ」というのは、何度も何度も伝えていきました。 「先生方から要望のあった機能を実装しました!」というように新機能を紹介したり、簡単なものであれば要望を受けてから1時間以内に対応したりということを地道に続けました。 そして、誰でも意見を投稿できるように、クローズドな掲示板を立ち上げ、そこで多くの意見を吸い上げるようにしました。
これらの結果、先生から意見が言いやすくなったように感じます。そして、何より「意見を言えば聞いてくれる」と感じてもらえることによって、 先生のモチベーションが刺激される効果もあったと感じています。
まとめ
今回紹介したユーザを理解ための施策は、ほとんどがスケールしづらいものです。もっと大規模になった際に、ここであげているような施策がそのまま機能するのは難しいでしょう。
私たちのサービスは昨年本格リリースしたばかりであり、まだまだ始まったばかりのサービスです。 このようなフェーズでは、スケールするかどうかに関わらず、ユーザを深く理解しサービスの質を向上させることが重要だと考えています。
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