レシピ事業部バックエンド基盤グループの石川です。
2024 年 5 月 15 日から 17 日にかけて、RubyKaigi 2024が開かれました。クックパッドは Wi-Fi スポンサーとして協賛しており、また 16 日の夜には Cookpad Drinkup at RubyKaigi 2024 と称して懇親会を開きました。
この記事では、カンファレンスで懇親会を開くにあたって気をつけていたことや、うまくいったこと、うまくいかなかったことをまとめます。RubyKaigi に関わらず、技術者コミュニティを盛り上げる手段のひとつとしてご覧ください。
Drinkup の目的
今回の Cookpad Drinkup at RubyKaigi 2024 は自分が取りまとめを担当しました。
この drinkup の参加募集ページには「参加者同士の交流の場として是非ご利用ください」という一文を載せていました。カンファレンスにおいて企業が懇親会を開くというのは、もちろん弊社のことをもっと知ってもらいたいという広報・採用的な目的もありますが、同時に、我々が普段使っている技術のコミュニティをもっと盛り上げたいという意図があります。クックパッドでは Ruby を複数のサービスでヘビーに利用しています。我々としても「Ruby が死ぬ」と困る訳です。このため自分も含めて Ruby のユーザーをモチベートしたり、ユーザー同士のネットワークを広げて人々がやれることを増やしていったりといった活動には意味があるのです。
特に(最近の)RubyKaigi では、各トークの後に質疑応答の時間が設けられていません。休憩時間はありますが、スポンサーブースをまわったり、ちょっとした会話や開発をしていたりすると過ぎてしまう程度の時間です。このためトークについての雑談をするための比較的落ち着いた場としても利用していただけたらなという思いもありました。
自分がコミュニティ運営で迷ったとき個人的に参考にしている書籍『アート・オブ・コミュニティ』(Jono Bacon 著、渋川よしき 訳)に載っている言葉として、「ファミリーの価値を創造する」という言い回しがあります。単に同じ界隈に居る人、というだけに留まらず、同じ技術を日々使い、同じ文脈を共有する「ファミリー」と話して何かが生まれる場になれば、最高ですね。
気にかけていたこと
そういった意味で drinkup を開くために、開催に向けて気にしていた細かいことがいくつかあります。ここに列挙してみます。
参加者が喋りやすい空間にする
お店を選ぶ際、広めの部屋に席が並んでいて、美味しいご飯や飲み物を手に取りつつ、どちらかというと喋ることに比重が向くようなお店を選びました。皆さんには会話をしてほしいので今回は意図的に観光向けの見世物は考慮から外しました。喋りながら途中で自由に席替えしていくような会なので、ある程度移動の自由が効く食事を目指す形です。自分は考えていませんでしたが他社さんの事例だと、ドリンクサーバー制だったので飲み物を取るために人が出入りし集団が撹拌されて色んな人と喋れたという例もあるようですね。
ただし今回沖縄での開催となった RubyKaigi においては、遠方にあるお店の細かい部分まで確認するのがなかなか難しい側面もありました。そこで RubyKaigi 運営の中にいらっしゃる現地の方々のコメントを伺ったり(その節はありがとうございました)、食べログさんや Google マップさんにある写真をよく見たり、最終的にはお店の方に相談したりと、多めに確認をしました。割とギリギリまでドキドキしていましたね。いっそのこと一度事前に沖縄で現地視察しても良かったかもしれないです。自分は本職のソフトウェアエンジニアの仕事があるので、なかなかコレばっかりやっていられないのが難しいところではありますが。
お店選びの他に、開催ポリシーを示しておくことも重要だと考えています。今回は RubyKaigi 公式が定めているポリシーに則っており、このことを表示していました。またポリシー違反が見受けられたとき報告するために弊社側の連絡先を用意し、参加者のみが見れる情報として connpass に掲載しておりました。
ポリシーの延長線上として、物理的なセキュリティをどう確保するかも考慮には入れておりました。参加者ではない方が強引に入って来ないようにどうするとか、そういうのですね。厳しい話としては 2023 年 12 月の事例もまだ記憶に新しいところです。今回はお店をまるまる貸し切りにしたのでお店の入口のところで守ることにし、最初の入場のタイミングでは誰が入ってよいのか弊社の社員が判断、落ち着いた後はお店の方にお任せしていました。またお店を選ぶ時点でも、あまりにも繁華街に近すぎるお店は避けていました。考えすぎだったかもしれませんが、近くに客引きが立ち並ぶ場所があったのです。
写真撮影についても工夫できるポイントがあります。Drinkup では、運営としては参加者の方々が盛り上がっている様子を記録に残したくなりますし、また参加者同士においても #rubyfriendsなどの交流のために写真を撮りたくなるでしょう。RubyKaigi では公式の取り組みとして、名札の紐の色で写真撮影の可否を個々人が表明できるようになさっていました。我々の drinkup でもコレを利用させていただき、参加者には名札を持ってきてもらうようにしていました。名札があることによって RubyKaigi 参加者だと確認できるのと参加者同士で名前が分かるというのもあり、便利でした。事前・事後イベントで似た方式を採用なさっていた会もありましたね。また、失敗としては、写真を撮りやすくなるかもと思って実験的にフォトプロップスを作って持っていったのですが、これは殆ど機能しませんでした。唐突すぎたかな。
多様な参加者が集まれるようにする
また、参加者の層が一極集中しないようにもしていました。RubyKaigi には世界から参加者が集まります。アメリカやヨーロッパはもちろん、それ以外の場所も含め世界中から集まります。当然さまざまなバックグラウンドを持った方々がいらっしゃるので、できる限り広い範囲の方が参加しやすいように心がけました。話題も多種多様なものが集まると面白そうですしね。
参加募集のページが日英併記になっているのもその一環です。そもそも RubyKaigi の公用語は英語なのです。
参加者を募集し始める時刻もタイムゾーンを気にして、せめて人口が多そうな場所の真夜中にならないように……程度の確認をしていました。後から思いついたのですが、これはたとえば参加者枠を 4 等分して 6 時間ごとに増枠していく、でも良かったかもしれません。ただ結果としては募集開始して即座に枠が埋まり切ることはなく、かつその後もゆっくりとキャンセルと応募が繰り返され補欠枠が繰り上がっていたので、若干気にし過ぎではあったのでしょう。そもそも本当は RubyKaigi 当日に参加したくなったとしてもフラッと立ち寄れるくらいの参加方法にしたいという話はあったのですが、予算や事前準備との兼ね合いがなかなか難しいですね。
難しかったのは食べられないものに対する対応です。好き嫌い、アレルギー、宗教上の理由など、人それぞれ食べられないものは存在します。少人数の集まりであればうまく避けて調整できるでしょうが、今回の会は大人数な上、開催直前まで参加者が確定しません。またお店の都合として、大人数の料理を作るためにどうしても大皿料理は避けづらいです。この点については事前にお店の方と相談し、事前の連絡があれば都度対応を考えるという方式にし、参加者が相談できる連絡先を用意しておりました。ただもっと良い方法はありそうな気がするので、今後も模索したいところです。
また、他社さんがなさっていて良いなと思ったのが、参加枠をいくつかに区切るやり方です。RubyKaigi 初参加の方向けの枠を作ったり、海外勢向けの枠を作ったり、など。あまり分けすぎてもそれはそれで大変そうですが、drinkup 参加に際して不慣れな方でも不利になりすぎないような仕組みを作っておくのは有用そうに感じています。
その他細かいこと
- 会場に近いお店を選ぶ。今回選んだお店は、RubyKaigi の会場から徒歩 2 分ほどの場所でした。この結果、ぎりぎりまで会場で議論してから移動したり、一度ホテルに帰って荷物を整理してから移動したりできたのではないかと思います。
- イベント運営側と連携を取る。開始時間の目安であったりウェブサイトへの掲載であったり、相談しておくべきことがありました。
- イベント用のバナーを作る。SNS に投稿しやすくなったりします。今回は社内のデザイナーの方にお願いして作ってもらいました。
- アルコールを嗜まれない方でも楽しめるようにする。イベントを発信する側としては、過度にお酒を強調するような言い方は控えていました。まあ drinkup って言っちゃってるんですが……。また、会場が居酒屋であった以上、一定の参加しづらさはあったかもしれません。
- connpass で「重複参加を許可しない」に設定する。同時間帯に様々なイベントが開かれることは予想できたので、なるべく厳密な参加者数を保つために重複は許しませんでした。
- connpass の出席管理機能を活用する。当日どなたが既にいらっしゃったのか把握するため、connpass の機能を使いました。具体的には入口のところで connpass の受付票番号を見せていただき、名札と番号で照合して connpass の出席チェックボックスにマークしていました。具体的にはパソコンを開いてページ内検索でやりくりしたのですが、これがスマホだと操作しづらくて厳しかっただろうと思います。
今回は connpass さんを利用したので connpass の言葉で書いていますが、Doorkeeper さんなど他のサービスを利用される際も似たような感じになるはずです。Doorkeeper にはチケットのバーコードを読み取って出欠管理する機能があるので、より多人数のイベントでは便利でしょう。今回の drinkup は弊社社員を除いて 50 名ほどの規模でした。
結び
というわけで、自分が今回 Cookpad Drinkup at RubyKaigi 2024 を開くにあたって気にしていたことをまとめてみました。自分自身このような不特定の方が多人数集まる会を主催したのは初めてで、不安になるタイミングが何回かあったので、似たような方の助けになると良いなと思います。
それではまた次のイベントでお会いいたしましょう👋