Quantcast
Channel: クックパッド開発者ブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 726

Android TVアプリの自動化されたテストの小話

$
0
0

技術部の松尾(@Kazu_cocoa)です。

クックパッドでは、2年程前からAndroid TVに対してアプリをリリースしています。以前、Cookpad Android TV Appのデザインで考えたことにて触れられたこともあります。

f:id:kazucocoa:20170622175302p:plain

みなさんがGoogle Play Storeからダウンロードするクックパッドアプリには、1つのバイナリ(または apk)にスマートフォン/タブレット向けの実装とAndroid TV向けの実装が含まれています。そのため、スマートフォン/タブレット向けのクックパッドアプリのリリースサイクルと同じ周期でAndroid TV向けのアプリも更新されています。

1つのパッケージに全てのプラットフォームの実装を含めることで、どのプラットフォームにおいてもユーザーはただひとつのクックパッドアプリを探してインストールすれば良くなります。開発者側としても、パッケージ管理が煩雑にならずに済むという利点があります。一方で、例えばスマートフォン/タブレット向けの対応だと思っていたものや、共通して利用しているライブラリの更新などによりTV向けの機能が意図せず壊れる可能性があります。(ここはトレードオフになりますね)

クックパッドでは、そのような破壊が含まれないように、スマートフォン/タブレット同様、自動化されたいくつかのテストを実施しています。Android TV向けに関しては、日頃行うリリースフローの中では人間の手による確認は不要となっています。

この記事では、そのようなAndroid TV向けの、少しニッチな世界のテストコードのお話をします。

アプリの変更頻度

Android TV向けのUI変更を含んだ機能開発は、ここ1年以上の間、スマートフォン/タブレットに比べてほとんどありません。また、アプリの画面遷移数や機能も、スマートフォン/タブレット版と比べるとはるかに少ないです。そのため、リリース頻度はそれなりにあるが、リリース毎の変更はない状態を保っていました。

不具合の発見

ここ半年程度を振り返ると、2回ほど、スマートフォン/タブレット側の修正に影響され、Android TVでクックパッドアプリを操作した時にクラッシュを引き起こす不具合が混入していることがありました。1つは画像ライブラリに関係するもの、もう1つは不要な画像リソースを減らす時の対応漏れです。それらは、あらかじめ用意していた自動化されたテストだけで検出されています。

社内のエンジニアの多くは、通常はスマートフォン/タブレットを使い開発していますし、全ての開発においてほとんど影響のないAndroid TVの確認も要求することは効率的ではありません。(Android TV向けの多くのコードは分離されているため)そのため、あらかじめ想定していた戦略に沿って、期待したタイミングでちゃんと不具合を見つけることができました。

なお、そのテストコードのメンテナンスコストを考える方もいるかと思いますが、Android TV向けのテストシナリオだけを必要に迫られて修正した回数は2年間で1回です。他にはEspresso全体で共通して使ってるメソッドの置換などです。(例えば以下を見ると、fixと修正しているのは1年程度前のものだけ)

f:id:kazucocoa:20170622175321p:plain

このように、シェアが低い・対応優先度が低いものに対してテスト実行する量を減らすではなく、自動化に倒してリグレッションテストとして不具合をリリース前に検出できる形にしていました。

自動化されたテストの種類

ここからは、少し具体例を混ぜながらどのようなテストコードを書いているのかを載せていきます。以下ではテストサイズの区分を元に言葉を使っています。合わせて軽く補足を足しますが、もう少し区分を把握したい方は先ほどのリンク先を参照ください。

Sサイズ/Mサイズのテスト

広く単体テストと呼ばれるような粒度の自動テストです。これらは、スマートフォン/タブレット側と共通して使っているもの以外はほとんど書かれていません。これは、Android TV自体がログイン機能を持たないなど、最小限の機能だけを持っているため、複雑な内部ロジックを持たないビューアになっていたためです。そのため、このサイズではあまり多くをカバーせず、後述する範囲で必要なぶんだけの領域をカバーしています。

Lサイズの単体・シナリオテスト

UIの単体テストとして、もしくは一連の短い画面遷移ベースのシナリオをもとに各画面の確認をLサイズのテストとして実施しています。ここではEspressoベースのテストコードに書き上げています。

キーマッピング定義

Android TVではリモコンの上下・左右などに対して以下のようにKeyEventがあり当てられていました。そのため、Android TVの文脈における用語の対応を用意し、Espressoのシナリオを記述するときに表現が実際のTVの操作に近づくようにしました。

これは、シナリオコードの可読性をあげるためのちょっとした工夫ですね。

publicenum Keys {
    TV_UP(KeyEvent.KEYCODE_DPAD_UP),
    TV_LEFT(KeyEvent.KEYCODE_DPAD_LEFT),
    TV_RIGHT(KeyEvent.KEYCODE_DPAD_RIGHT),
    TV_DOWN(KeyEvent.KEYCODE_DPAD_DOWN),
    TV_ENTER(KeyEvent.KEYCODE_DPAD_CENTER),
    TV_BACK(KeyEvent.KEYCODE_BACK),
    TV_HOME(KeyEvent.KEYCODE_HOME),
    DEVICE_BACK(KeyEvent.KEYCODE_BACK);

    privatefinalint keyCode;

    Keys(int pKeyCode) {
        this.keyCode = pKeyCode;
    }

    public ViewAction press() {
        return pressKey(keyCode);
    }
}

また、Android TVではその特性上、特定の要素に対してスマートフォンなどでいう タップ操作がありません。基本的にはKeyEventを繰り返し入力することでカーソルを移動させたり、決定したりする必要があります。そのため、例えば以下のようにViewを特定するための一連の操作を1つのメソッドにまとめて記述し、確認したいシナリオに対してノイズになるような表現を減らしたりもしました。

private ViewInteraction onRelatedRecipeCardOnMainActivity() {
        return onView(isRoot())
                .perform(Keys.TV_DOWN.press())
                .perform(Keys.TV_DOWN.press())
                .perform(Keys.TV_DOWN.press())
                .perform(Keys.TV_DOWN.press())
                .perform(Keys.TV_DOWN.press());
    }

Eテストとアプリの更新テスト

アプリ更新時に何らかのマイグレーションなどの処理が実行されたりする場合や、ローカルデータの不整合などに出くわすとアプリが更新直後にクラッシュしたり、次回以降の起動に失敗するなど発生することがあります。 そのため、Android TVに対しても、すでにスマートフォン/タブレットに対して行なっている自動化されたUIテストの中から1つ前のアプリバージョンからのアプリ更新の確認を自動化し、検証されるようにしています。Android TVはネットワークに接続されていればほぼ強制的にアプリの更新が実行されるため、スマートフォン/タブレットでは過去7バージョンに対する更新確認を行っている一方で、1つ前の公開されているバージョンのみの確認にとどめています。

ここで行っているバージョンアップの確認は非常に簡単で、以下のコマンドのように1つ前のバージョンがローカルに保存したデータを保持したまま、新しいバージョンに更新するというものです。マイグレーション処理などがうまくいかないなどあれば、この更新した後のアプリ起動の時に処理がおかしくなります。

# 1つ古いバージョンのアプリをインストールする
$ adb shell install com.example.app
$ adb shell am start -n com.example.app/.Main

# 新しい、テストしたいアプリをインストールする
$ adb shell install -r com.example.app
$ adb shell am start -n com.example.app/.Main

まとめ

少しニッチな話題として、Android TVにおける自動化されたテスト環境、それらがどの程度のメンテナンスコストで行われているのかを書きました。このように、大きく機能追加はないが継続してリリースする必要のある機能に対しては自動化されたテストは非常に効率的に機能します。そんな状態になっているアプリの一例でした。

TVに関するとちょっとしたよもやま話

最後に、ちょっとしたAndroid TVに関わる知見を共有しておきます。UI_MODE_TYPE_TELEVISIONの値に関してです。UI_MODE_TYPE_TELEVISIONでAndroid TVかどうか判定する場合、実はAndroid TV ではない 4.x 系のセットトップボックス端末とかが引っかかることがあります。そのため、UI_MODE_TYPE_TELEVISIONをもつがAndroid TVではない環境下で、Android TV向けのAPIを呼んでしまった場合、アプリがクラッシュしてしまいます。国内ではいくつかこの状態になる端末が存在するらしく、私たちも再現するまで気づかなかったのですがこのような状態になるようです。(ただ、 UI_MODE_TYPE_TELEVISIONによる判定はGoogle公式にも書かれている方法ではあるのですが)


Viewing all articles
Browse latest Browse all 726

Trending Articles