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料理をつくる人はどんな課題を抱えているのか? 〜ユーザーの課題を施策につなげるインタビューの取り組み〜

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こんにちは。投稿開発部 ディレクターの五味と申します。 初日の記事から5日間に渡ってお届けしてきた「クックパッド MYキッチン」の連載も、いよいよ今回が最終回です!

私たち投稿開発部では、クックパッドユーザーの中でも特に「レシピを投稿するユーザー」にとって最適なアプリを追求するために、「クックパッド MYキッチン」アプリをリリースしました。ではこれからそこで、ユーザーにどのような体験や機能を提供していくべきでしょうか。

今回は、ユーザーの課題を起点に次の施策を発想していくために行なっている、ユーザーインタビューの取り組みについて紹介します。

f:id:natsuki53:20180419194028p:plainApp Store / Google Play

料理をつくる人はどんな課題を抱えているのか

投稿開発部は現在「クックパッドにレシピを投稿するユーザーを増やすこと」を目標とし、その戦略として「レシピ投稿の継続率を改善すること」と「レシピを投稿し始める人を増やすこと」の2点に注力することを決めています。

施策を考える上では、目先の数字を稼ぐのではなく、レシピ投稿を、何らかユーザーの課題を解決する、ユーザーが使いたくて使う手段にすることを重視しています。それを実現する指針を得るためには、料理をつくる人が抱えている課題を知り、できるだけ深く理解をする必要があります。

チームではそのため、アプリ開発と同時並行でユーザー調査を進めてきました。

調査の計画:ユーザーの実際をもっと知りたい

ところで投稿開発部は2018年に新設された部署です。メンバーは部長含め、サービス開発の経験はあれど、レシピ投稿者にフォーカスして取り組むのは初めての面々でした。さらに部内には、ユーザーインタビューを通してユーザーの課題を発見するための設計をしたことがある人もいません。そのため、部の発足当初から、定性的なユーザー調査に積極的に取り組むことは計画していました。

2月に入り「クックパッド MYキッチン」アプリの開発目処が立ってきた段階で、計画の実行に着手しました。投稿開発部のメンバーは7名と多くはないのですが、知見を自分たちのものにするためにも、インタビュー対象者のリクルーティングからすべて自分たちの手で行うことにしました。

まず有効な調査手法を手っ取り早く学ぶため、『ユーザビリティエンジニアリング*1』を参考図書とさせていただきました。書籍を読んで、サービス開発で重用する定性的ユーザー調査は大きく3つに大別されると考えました。

▼私の理解は以下の通りです f:id:natsuki53:20180419192007p:plain

当時ようやく主要機能が動くようになっていた「クックパッド MYキッチン」アプリがある状況で、投稿開発部としてユーザー調査を始めるなら、そのアプリを用いたユーザビリティテストから行うことが順当に思えました。

開発チーム全員が参加するインタビューに

インタビューを始めるにあたり意識していたことが、この取り組みにエンジニア含めたチーム全員が直接関わり、ユーザー理解を一緒に深められるようにすることです。

そのため、すべてのインタビューに中継機材とカメラを用意し、別室に待機するチームメンバーがインタビューの様子を同時中継で見られるようにしました。モニター室では各自メモを取ってもらいながら、ユーザーに聞きたいことがあれば、ファシリテーター役をしている私のPCにチャットで質問を入れられるようになっています。これによって、メンバー全員が当事者としてインタビューに関わることができるようになりました。

インタビュー開始と早々の方針見直し

ユーザーのリクルーティングや調査票・スクリプトの設計、会議室や機器設置に手間はかかったものの、リハーサルなども行いながら、何とか3週間程度でインタビューの開始に漕ぎつけました。しかも実際テストを開始してみると、新しいアプリは思った以上に円滑に操作され、用意したタスクリストは大きな問題なくこなされ、上々に過ぎていきそうに見えます。しかしその反面、ポジティブな反応も希薄なことが徐々に気がかりになってきました。

チームの興味は段々、アイスブレイクとしてヒアリングしていたユーザープロファイルに移っていきました。思えばチームメンバーにとって、「既存/潜在作者」とされる社外のユーザーにきちんと話を聞くのはそれが初めてだったのです。その人物像や生活背景への自分たちの理解の浅さに気がつくまで、時間はかかりませんでした。

結局私たちはインタビュー開始3日目には、開発中のアプリのユーザビリティよりもずっと前の段階に自分たちの問題点があると判断し、テストは早々に切り上げ、ターゲットユーザーの日常生活に潜む課題を見つけるための生成的調査へ転換することにしました。

生成的調査の試行錯誤

既に存在するプロトタイプの調査をするユーザビリティテストに比べ、まだ目に見えないユーザーの課題を対話の中で引き出す生成的調査は、難易度が高いと思います。この種のインタビューは漫然と行うと、得られる学びも漫然のまま終わることは経験してきているため、やるからには確固たる学びを得たいと考えていました。

- 苦慮したポイント1:設問設計

設問設計には当初から苦心しました。先述の『ユーザビリティエンジニアリング』には、ユーザーとの対話の中からキーワードを見つけて根掘り葉掘り質問をしていく手法をお薦めされており、「事前にインタビューガイドを作っても絶対にその通りにインタビューするな」と書かれています。しかし私たちのインタビュー対象者は、普段実際にクックパッドをご利用いただいているユーザーさんでもあるので、会話が途切れたり失礼を働くことが怖くなってしまい、結局、電話営業のトークスクリプト並みにがっちりと設問を並べた台本を用意してしまいました。

- 苦慮したポイント2:インタビュー後の振り返り

インタビュー後の振り返りの仕方にも悩みました。そもそもの課題抽出を目的とする生成調査は、検証調査やユーザビリティテストのように、答えを出す項目が先に存在するわけではありません。事前に想像できる範囲には限りがあるため、結局最初の1〜2回のインタビューを実地演習と割り切っていくつかの手法を試すしかありませんでした。

振り返りは、モニター室でインタビューを見ていたメンバーのふせんメモとホワイトボードを使うのが効率的です。ふせんメモをネガティブ/ポジティブで整理してみたり、対話中に見せたプロトタイプの種類別に整理してみたり、いくつかパターンを試した結果、ユーザーに語られたエピソードからメンバー各自気になったものを出し合い、「事実」と「(ユーザーご自身の)意見」に分けて整理する手法に今は落ち着いています。

「事実」「意見」ごとにKJ法を用いて重要そうなキーワードを見出したら、その周辺のエピソードを洗い出し、背景にある動機を想像して、各対象者が持っている「料理に関する課題」を推察して書き出せたら、その回の振り返りは完了です。

▼振り返り時の板書のイメージ(内容は架空です) f:id:natsuki53:20180419192140p:plain

振り返りの手法が固まると、インタビューの構成も、こちらが用意する質問に広く浅く答えてもらうのではなく、ユーザーの言葉で普段の料理や食事を取り巻く状況を語ってもらうものになっていきました。それに従い、設問もおのずとシンプルになります。当初20問近くあった設問が、最終回のインタビューでは2問まで減ったのは、とても印象的な出来事でした。

f:id:natsuki53:20180419192214p:plain

得た学びを確実にする作業:総括レポート

ユーザーの普段の料理の状況を根掘り葉掘り聞き出し、インタビューごとにチームで振り返りを行って、彼らが料理に関して持っている重要な課題を書き出す手法により、個別のインタビュー対象者ごとの理解は深められるようになりました。対象にしたユーザーごとに書き出した課題をリスト化して、次の施策を考えるネタにもできそうです。

しかし、インタビュー全体としての評価はどうでしょうか?得られた学びが何だったか、明言はできるでしょうか?コストをかけてしっかり行ったインタビューなので、結果はうやむやにせず、チーム全員で得た学びを確実にものにしたいです。

そこで私たちは、普段プロジェクトごとに作成している施策設計・評価用のレポート「report.md*2」を、インタビュー調査でも作成するようにしました。

インタビュー調査は機能開発とは施策設計が異なるため、report.mdの構成も少々見直し、以下の項目で作成しています。

- 目的
- 対象ユーザー
- スクリプト
- 議事録
- 結果
- 次のアクション

インタビュー調査の計画時・完了時にこのレポートをGitHub Enterpriseの自部署のリポジトリにPull Requestで作成し、チームメンバーにレビューしてもらいます。こうして1枚の簡潔なレポートにまとめることで、調査計画も、全回のインタビューを経た考察や結論も明確に提言され、またチームメンバー間での理解の差も埋められ、結果を次の施策に生かしやすくなりました。

「クックパッド MYキッチン」での検証へ

私たちはいま、このインタビュー調査から得たユーザーの課題リストを元に、次に注力するユーザー課題を絞って取り組んでいます。メンバー全員が一連のインタビューの様子や結果を共有しているため、調査以前に比べてターゲットの人物像から具体的に解決策のイメージが湧くようになったことを実感しています。

ここから得た理解やアイデアを元に、次の施策のプロトタイプを鋭意進めています。近日中に「クックパッド MYキッチン」アプリで検証を始める予定でおりますので、リリースを楽しみにお待ちください。

アプリのインストールはこちらから! App Store / Google Play

終わりに

5日間に渡りお届けしてきた「クックパッド MYキッチン」の連載記事、いかがでしたでしょうか。最後に今一度、これまでの連載記事と、執筆した開発メンバーを紹介させていただきます!

クックパッドMYキッチンアプリ、ならびに、投稿開発部にご興味を持ってくださった方、一緒に開発に取り組んでくださるメンバーを募集中です!

採用サイトまで、お気軽にお問い合わせください!!

*1:橋本徹也 著『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法』amazon

*2:クックパッドのサービス開発チームで行なっている、施策レポートの取り組み。詳細は私の昨年の記事で触れています。


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